湖の話

テレビにポロンナルワの人たちが出てました。
アヌラーダプラ、ポロンナルワは今では降雨量によって生活が左右される不自由が多い地区。
でもそこでの今日のテレビでは
「国から金銭的な支援をもらいたいからこうして訴えているんじゃない!」
って訴えてました。
簡単に言ったら
「私たちが生活できる基盤をください。」
そういう事を訴えていたんだけど、これを見ていろ〜んなことを考えちゃいました。
テレビの中で小さな子供を抱いたお母さんは
「私たちは小さいときから何度も国の支援を受けてここまで大きくなりました。
そして子供も生まれてここにいます。でも、私たちが望んでいるのはずっとこうして支援を受けて人生を送り、この子供が何年か後に私と同じように支援を受けることじゃない。
私たちだって自分たちで生きていきたい。そのための基盤をくださいと言ってるんです。
支援はもういらない。私たちが自分たちで自分たちの生活を作っていける環境をどうして作ってくれないんですか?どうして支援ばかりするんですか?」
と話し、もう一人の男性は
「支援、支援。支援ばかり。ここは昔王様が作った湖が今もあり、稲作ができれば何とかなる。でも今の国はそれさえも見てくれない。支援じゃない。祖先が作った湖を使えるようにして欲しい。それが整えば国からの援助ばかりで生きなくてもいいハズなんだから。」
(*共に意味が通じるように大まかに意訳してます。)
生活の支援というのは簡単だけど、もらったお金、物資が尽きればそれまで。
薄っぺらなその時ばかりの支援はいらない。
くれるなら物ではなく自分たちが自立できるものが欲しい。
でもそれは新たに技術を教えたりすることではなく、自分たちが昔から使ってきたものがつかえるようになれば自立できる事だってある。
答えはわかってる。でもそれが今の世の中では難しい。
内戦が終わり、どんどん近代化するスリランカ。
その反対にはるか昔から高度な湖文化があったスリランカには昔の王様によって今ではもう再現不可能と言われる技術で作られた湖がある。
それらの湖は王都があったアヌラーダプラ、ポロンナルワに集中していて、アヌラーダプラのティッサウェワ、ポロンナルワのパラーックラマ サムドゥラなんかは観光客でも良く聞く名前。

パラーックラマ サムドゥラ
これが作った湖!?と思うほど大きいですよ。

昔の王様となるためのクラヤ(職能・カースト)はゴウィガマ(稲作農家)で、その中でも更に細かく分かれているカーストの上のものが王様になる権利を持つ。
このゴウィガマが最上級ということでもわかるようにスリランカでは稲作が国でも重要であったということ。
だからこそ灌漑を整備し、国民がより多くのお米を作り、人口を増やしていくための湖作りが昔の王様がしなくてはいけない一番重要な仕事であったと言われる。
話はちょっとそれるけど、だからこそシーギリヤのカーシャパ王が父のダートゥセーナ王に
「国の宝を見せてください」
と言った時、王が見せたのは王が作った湖のカラーウェワ。
カーシャパ王はその意味がわからずダートゥセーナ王を殺してしまったけど、ここでも自分たちの生活を潤わせてくれている湖こそが国の宝に匹敵していたとわかるし、逆に言えばカーシャパ王はその時にまだそのことがわかっていなかったんじゃないかとも取れる。
そうして作られた高度な技術を持つたくさんの湖。
現代になってどうなっているかというと、水路は土や泥で埋まり、うまく水が流れなくなり、だからこそ稲作がうまくできなくなってきているという。
だからこの男性が訴えていたのは
「その水路を復活させてほしい。機能はなくなっていないんだから」
ということ。
ここで、
「じゃ、それやってあげればいいのにどうしてやらないの?水路をきれいにしてあげるだけでしょう?」
と思ってしまうところだけど、ところがどっこい、これがまたそう簡単な話ではないんですよ。
この昔作られた湖はさっきも書いたようにとても高度な技術で作られてる。
そのため水路もとてもデリケートで現代のショベルカーや機械を使えばゴミや障害物は取り除けるものの、それをすると湖の機能は使えなくなってしまうという。
というのも湖の底も、水路も、固めてあるのは当然コンクリートじゃない。
そこをショベルカーなどで掘った場合、その部分の湖や水路の深さが変わり、水がうまく流れなくなってしまうという。
そうなれば湖自体が壊れてしまい、未来永劫使えない無用の長物となってしまう。
そのくらい精密な計算をされて作られているものということ。
だからその機能を取り戻すには人々が鍬や鋤を使って目視で昔作った人たちの水路や湖の底がどこになるのか確認しながら手作業で行わなくてはいけない。
そのための資金、人手・・・それは長期的な物となり、そこには莫大なお金もかかる。
だからこそ国はいつも簡単にできる短期的な支援を選び、本腰を入れてくれない。
結果、根本的な解決にはならず、生活もよくならず、今では貧しい地区と言われてる。
昔は国内でも一番人口が集中していた場所なのに。
湖はあればいいものじゃなくて、それが使えなければ意味がない。
機能は失われていないのに、それを取り戻すのは簡単じゃない。
でも大事な事はまだ壊れてない!!ってこと。
「いつも『選挙で湖を修復します。』
と公約しても選挙が終わると誰も来ない。
いつもそればっかりだ!」
村の人たちは何度もそう言ってました。
そう、確かにスリランカに支援をするならこういう人々がもともと持っているものに何かができるといいんですよね。
この世界、今はお金という通貨ですべてが動いているけど、この湖が作られたのはまだ物々交換で国が丸くおさまっていたころ。
そして何百年も経った今もまだその機能を失っていない湖。
昔の王様と昔の人々、すごい。
心からそう思います。
やっぱり私、スリランカの人たちの今の姿、昔のこと。
私自身も学びながら、こういうのを日本に伝えていきたいんだな〜。
そんな風に感じた報道でした。

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